PLAGUES−アーティストレビュー

PLAGUESというアーティストのことを知ったのは、はるか30年ほど前の学生のころ。音楽に詳しい友人から勧められて聴いてみたのだった。

『ライド・ライド・ライド』というその曲は、なんというか気だるいようなギターの音で始まり、ゆっくりと流れ、やがて控えめに、けど確実に盛り上がっていく。音の雰囲気が、私の乏しい音楽経験では初めてのものだったのでどうしても異物感があり、「聴いた瞬間に電気が走った」というように即応できたわけではなかった。

だがやっぱり気持ちが良かったのだろう。やがてその『ライド・ライド・ライド』が入った『リトル・バッファロー・ララバイ』というアルバムを繰り返し聴くようになった。音がとにかくカッコイイのだが、それに勝るとも劣らないくらいに歌詞が良かった。完全にできあがった世界観を出現させる美しい言葉たちが、気持ちのいい旋律とギターの音に乗って来る。

そうなると、プレイグスの音楽を全部聴きたくなる。過去に遡り、一つ前のアルバムでメジャーデビュー作でもある『シナモンホテル』を聴いてみると、さらに深いプレイグスワールドがそこにあった。「これがメジャーデビューアルバム?」と疑問に思うほど、世間への媚がない。地味といってもいい。でもそれが、悩まなくていいことで悩むことが性癖になっているような、いわゆる隠キャ寄りの私にはツボだった。

『錆びたワゴンは旅路の果てに』の歌詞にある「彼の至上の純朴さが世界の終わりを望むように」のような表現が、当時の自分の心情そのものだと思った。

時が流れ、私はすっかりオジサンになった。普通に就職し、普通に家族を持ち、普通に歳をとっている。プレイグスはメンバーが減ったり、曲調が多少変わったりで変化はあったものの、今も活動を続けている。オリジナルメンバーは中心メンバーの深沼くん(親しみを込めてこう呼ばせてください)のみになってしまっているが、今も素晴らしい曲を作り続けてくれている。彼も結婚し、子供ができたりしているし、音楽活動の範囲や技術なども当然向上しているのだが、ライブに行けばやっぱりあの頃のカッコイイ深沼くんだ。

そしてそのプレイグスを今も好きでカッコイイと思う自分の中にも、まだあの頃と同じ部分があるんだなあと思い、嬉しさと気恥ずかしさでちょっとニヤついたりするのだった。

ロックを聴こう!