新井英樹作品との出会い
私が新井英樹先生のマンガを最初に目にしたのは『愛しのアイリーン』という作品で、当時毎号買っていたビッグコミックスピリッツという雑誌に掲載されていました。それからドはまり、というわけでは全然なくて、小僧だった私にとっては生々しすぎる内容にちょっとした嫌悪感すら感じました。
パクチー
話は変わりますが、みなさんはパクチー好きですか?
私は、当初あのドクダミみたいな臭いがどうしても受け入れられず、嫌悪していました。台湾に仕事でよく行っていたころ、飲食店で「香菜(パクチー)は入れるか?」と聞かれるたびに「不要」と答えたものでした。そうやって聞いてくれる店ばかりではないので、どうしても口にしなければいけない場面も少なからずあります。残すのは嫌なので、我慢して食べていました。
ところが、出張を終えて帰国し、しばらく経つとあの香りが恋しくなっていることに気付く。いや、そんな馬鹿な。
そして次の出張に行く際はもう明らかにパクチーを求めているのです。知らぬ間に、クセになっていたのでした。
つまりクセに
ここまで書いてくるともう明らかですね。そう、いつの間にか『愛しのアイリーン』もクセになっていたのです。人間の情けないところ、汚いところもすべてさらけ出していくところが、むしろ無垢の美しさを感じる。そこが新井英樹作品の魅力であると私は思っています。
『SUGER』から『RIN』へ(ネタバレ注意)
『RIN』というマンガは『SUGER』というマンガの続編になります。すごく大まかにいうと、主人公の石川凛がプロボクサーになるまでが『SUGER』、その後ボクサーとしての才能を開花させて上り詰めていくストーリーが『RIN』ということになります。
こう書くとボクサーとしての栄光の軌跡のように見えるし、そういう部分もあるのですが、そう単純ではないのが新井英樹作品。一見すると小器用でチャラい感じにも見えるが実はものすごく純粋で一途な凛が、様々な人間と不器用に交わりながら、変わっていく部分と変わらない部分を見せていく、そんなストーリーです。
天才を味わう
そういった、不器用に人を愛し、純粋であるがゆえに人とぶつかる凛を中心とした生々しい人間模様も本作の魅力ですが、それを上回って強く引き付けられるのが、石川凛というボクサーの才能です。
紆余曲折あってやはり天才と呼ばれたボクシングジムの会長に師事し、その才能を開花させていきます。これがとてつもなく気持ち良い。特に立石戦はもう…!繰り返し繰り返し、鼻息を荒くして読みました。
きれいなだけのストーリーに飽きた方、天才へのあこがれが強い方、お勧めです。
今読まれている本はこれ!